1. 境界紛争について〈住まいのはなし〉
住まいのはなし

境界紛争について〈住まいのはなし〉

〇境界とは何か

境界には、筆界(公法上の境界)と所有権界(私法上の境界)があります。

筆界とは国が人為的に区画した土地の境界です。土地には全て番地が付されて区分されており、区分された各土地は一筆、二筆と数えます。筆界は私人が合意で変更することはできません。

これに対し、所有権界(私法上の境界)とは土地の所有権の範囲を画する境のことをいい、これは私人の合意によって変更することができます。

通常、筆界と所有権界は一致することが多いのですが、例えば一筆の土地の一部を所有者以外の者が占有し時効取得した場合など、両者が一致しない場合もあります。

〇解決手続き

隣地との間で境界紛争が生じた場合の解決手続には、以下のように、筆界特定制度、筆界確定訴訟、境界確認訴訟、ADR等様々な方法があります。それぞれ解決に要する期間や費用、紛争解決に適した事件などが異なりますので、事案に応じて手続を選択しましょう。

 

(1)ADR

ADRとは、Alternative Dispute Resolution(代替的紛争解決)の略称で、当事者と専門家などの第三者が協力して、裁判をせずに、迅速に紛争解決を図る手続きです。

京都では、境界に関する問題の解決機関として、法務大臣の認証を受けた「京都境界問題解決支援センター」があります。

◇特徴

①事案がADRに適すれば、土地家屋調査士と弁護士が相談に応じる。必要な場合は調査も行われる。

②調停申し立てを行い、相手方が出席すれば、土地家屋調査士と弁護士が同席して話し合いを行う。

③話し合いが成立すれば、合意書を作成し、境界標の設置や登記などを行う。

④相談手数料は15,000円(税抜)、基本調査費用は30,000円(税抜)。調停については、申立手数料 20,000円(税抜)のほか、期日1回ごとに15,000円の期日手数料、成立した場合は200,000円の成立手数料が双方負担となる(いずれも税抜)。費用面では、訴訟よりは安価で済む。

⑤裁判所で行う手続きではないため、原則非公開で他人に知られず手続きができる。そのため、隣家との関係に配慮する方に向いている。

⑥ただし、調停に応じるかどうかは任意であるため、隣家が応じなければ他の手続きに進むしかない。

 

(2)筆界特定制度

法務局で行う筆界を決める手続きで、筆界特定登記官が専門家である筆界調査委員(土地家屋調査士等)の意見を聞いて筆界を特定します。

◇特徴

①土地の所在地を管轄する法務局に申請。

②当事者が提出した資料以外にも職権で資料収集や現地調査等が行われる。

③相手方の協力は不要。

④申立手数料は対象土地の固定資産税評価額の合計額をもとに算定。合計額4000万円なら手数料は8,000円。場合によっては測量費用も必要。

⑤申立から筆界特定まで通常6ヵ月~9ヵ月程度。

⑥特定された筆界に不服があれば筆界特定訴訟を提起。

 

(3)筆界特定訴訟

裁判官が当事者の言い分をもとに筆界を定める裁判です。

◇特徴

土地の所在地又は被告の住所地(法人の場合は主たる事務所又は営業所の住所地)を管轄する地方裁判所(訴額が90万円以下なら簡易裁判所)に提起。

①当事者の提出した資料のみに基づいて判断。

②相手方の協力は不要。

③提訴の際の印紙代は係争地の固定資産評価額の合計額をもとに算定。合計額4000万円ならば印紙代は8万円。 他に郵券代や場合によっては鑑定費用なども必要。

④提訴から判決までの期間は1年半前後。

⑤不服があれば上訴可。

⑥当事者は自己の主張する筆界を特定して主張する必要なし。裁判所は請求棄却ができず、必ず筆界を決める。和解で筆界を決めることはできない。

⑦訴訟で筆界が特定されれば筆界特定制度は利用不可。

 

(4)境界確定訴訟

裁判官が当事者の言い分をもとに所有権界を定める裁判です。

◇特徴

①筆界特定訴訟の特徴に関する①~⑥は境界確定訴訟でも同じ。

②原告は必ず自己の主張する所有権界を特定して主張する必要あり。裁判所が請求を棄却する(所有権界を決めない)こともある。被告が自己の主張する境界を認めてもらうには反訴を起こす必要。和解で所有権界を決めることも可能。

 

境界問題は、わずかな認識の違いでも、感情的には大きくこじれることがあります。早期に弁護士にご相談ください。