1. 労災のはなし〈安心して働き続けるための法律問題〉
安心して働き続けるための法律問題

労災のはなし〈安心して働き続けるための法律問題〉

労災って?

 労働者が労働災害により負傷したり、亡くなったりした場合、休業補償や障害補償、遺族補償などの給付を受けることができます。

 労働災害は、工場での事故などだけでなく、長時間労働が続き、業務による過重負荷が原因で心筋梗塞になった、といった場合も含まれます。

 

「労働者」って?

 正社員だけでなく、パートや派遣社員も含まれます。会社が労災保険料を支払っていなかったとしても、労災保険の申請はできます。

 中小事業主や一人親方であっても、災害が発生したときに労災保険に特別加入していれば、労災保険の対象となります。

 形式上は、「業務委託契約」などとされていても、仕事の依頼を断る自由がない、勤務時間が拘束されているなど、実質的に労働者と言える場合は、特別加入していなくても労災保険の対象となります。

 

労災の対象疾病

 現場や工場の作業中に負傷した、といった場合はもちろんのこと、以下のような疾病が対象になります。

 その他、石綿(アスベスト)にさらされる作業に従事していた場合の肺がんや中皮腫、印刷事業業で発生した胆管がんなど、特定の業種により対象疾病は様々です。

 

いつまで請求できるの?

 労災保険では、以下のような給付が受けられます。それぞれ以下の期間請求しないでいると時効により消滅しますので、お早めにご相談ください。

労災の認定基準

脳・心臓疾患の場合

 業務による明らかな過重負荷で発症したかどうか、が基準となります。

 業務による明らかな過重負荷の有無については、以下の3点のいずれかの要件の有無で判断されます。

1 発症直前から前日に、業務に関連した人身事故で著しい精神的負荷を受けるなど、「異常な出来事」に遭遇した場合。

2 発症前おおむね1週間の間に、休日なしの長時間労働など、特に過重な業務に就労した場合。

3 発症前1ヵ月間に100時間を超える時間外労働又は発症前2~6ヵ月間平均で月80時間を超える時間外労働を行うなど、長期間にわたって著しい疲労の蓄積をもたらす業務に就労した場合。

 

精神障害の場合

 認定基準の対象となる精神障害を発病しており、その発病前約6ヵ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められる場合で、業務以外の心理的負荷や個体側要因(その人

自身の問題)により発病したとは認められないときに、労災認定されます。

 

 業務による心理的負荷の強度については、強姦やわいせつ行為などのセクハラを受けた、業務に関連して他人を死亡させたなど「特別な出来事」があったか、パワハラや長時間労働があったかなどにより評価されます。

 

労災の証拠集め

 負傷を除く労災において、業務上の災害と認定されるためには、長時間労働やセクハラ・パワハラがあったと認められるかどうかが重要です。

 セクハラやパワハラについては、その日あったことや言われたことを、手帳にメモしたり、その都度誰かに相談するメールやラインなどを残していれば、証拠になる可能性があります。

 長時間労働についても、出退勤の時間を毎日手帳にメモする、会社を出るときに家族にメールをするなど、後から労働時間が把握できるようにすることが大切です。

 

裁判での労災認定

 労災が認められなかった場合、3ヵ月以内に労災保険審査官に審査請求をすることができます。それでも認められなければ、労働保険審査会に対し、2ヵ月以内に再審査請求をすることができます。審査会の裁決でも認められなかった場合、3ヵ月を経過しても審査会の裁決がないときは、行政訴訟で争うことができます。

 行政訴訟で初めて労災が認められるケースもありますので、ご相談ください。