1. 借家〈住まいのはなし〉
住まいのはなし

借家〈住まいのはなし〉

〇敷金・礼金について

◆民法改正

 マンションやアパートを借りる際、敷金・保証金・礼金などを求められることがあります。このうち、敷金・保証金は家賃等の担保であり、契約終了後に返還されます。しかし、礼金は家主に対するお礼ですから返還されません。

 2020年4月から施行された改正民法では、これまで定義すら規定していなかった敷金に関する重要な規定が設けられることになりました。

 

◆敷金の定義

 まず、敷金とは「いかなる名義をもってするかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう」と定義されました。従来からの一般的な理解を明文化したものです。

 この定義に該当する場合、保証金と称する金銭も「敷金」に該当します。

 

◆敷金の返還義務

 敷金を受け取った家主は、①賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときや②賃借人が適法に賃借権を譲り渡したときは、「賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない」とされました。

 

◆敷金と原状回復義務

 賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務として典型的なものは滞納家賃支払義務や現状回復義務です。

 そして、原状回復義務についても明文化されました。具体的には「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」との規定です。借主は、通常使用による損耗や経年劣化による損傷及び責任のない損傷については原状回復義務を負わないのです。

 仮に、特別に責任を負担するという明確な特約を結んだとしても、借主が一方的に不利となるような特約は消費者契約法によって無効とされる可能性があります。

 

〇連帯保証人

◆民法改正

 家を借りるとき、保証人を要求されることも多いでしょう。この点についても、2020年4月施行の改正民法で変更がありました。

 

◆極度額(連帯保証人の責任限度額)の定め

 土地や建物の賃貸借契約において連帯保証人を付けるときには、必ず契約締結時に極度額(連帯保証人が幾らまで支払の義務を負うのか、その限度額)を定めなければならないことになりました。連帯保証人は、契約書で合意した極度額の金額までしか責任を負わなくて良いこととなります。

 逆に、極度額を定めていない連帯保証の条項は無効となりますので、契約書にその金額が記載されているか、必ず確認しましょう。

 

◆2020年4月1日以降の契約から

 ただし、2020年4月1日より前に契約した賃貸借契約については、この適用はありません。あくまで2020年4月1日以降に契約した分に限られますので、ご注意ください。