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佐藤弁護士のなるほど講座

  

「心の病」の労災認定〜その1

今回は、「心の病」の労災認定〜その1です。  前回までは、いわゆる「過労死」の労災認定の基本的な内容を述べ てきました。  実際の対応においては、それぞれの事案に沿った視点の取り上げ方 や、裁判を見据えた対応について、検討を重ねていくのですが、そう したことを書き進めていくのは別に機会に譲り、とりあえず、脳・心 臓疾患に関する「過労死」の労災認定の問題を一区切りして、この間 相談が増加している「心の病」に関連しての労災認定の問題に、話を 進めていくことにします。     最近の相談で圧倒的に増加しているのが、「心の病」(メンタルヘ ルス関連)の労災申請に関連したものです。  「職場でのセクハラや、パワハラなどにより、『心の病』を発症し た。」「長時間過密労働と新しい重要なプロジェクトの責任を負わさ れたことから心の病を発症し自ら命を絶ってしまった。」等々切実で 重い相談が増加しています。 こうした「心の病」に関しての労災認定の判断基準としては、平成 11年9月14日基発第544号「心理的負荷による精神障害等に係 る業務上外の判断指針」(以下単に判断指針といいます。)が示され、 労働行政上の「精神障害等」に関する労災認定は、この判断指針よる こととされています。 この判断指針は、平成11年7月29日付にてとりまとめをされて いる「精神障害等の労災認定に係る専門検討会報告書」に基づいて策 定されたものとされています。 「過労死」に関する労災申請について述べたのと同様に、労働基準 監督署における労災申請を考える上では、いろいろな問題点を有して いる判断指針ではありますが、この判断指針をよく理解し、その具体 的な運用を前提にした労災申請の準備検討をしていくことが必要です。 同時に、この判断指針の運用にあたっての考え方を理解する上では、 「精神障害等の労災認定に係る専門検討会報告書」は極めて重要な資 料ですので、この内容を理解する専門的な経験を有する方からのアド バイスを受けることが望ましいと思います。 また、「心の病」に関する労災問題に関しては、「過労死」に関す る労災問題以上に、個別的であり、それぞれの被災者(申請対象者) の具体的な状況と業務に関する情報の評価を吟味することとなるため、 一般的な記載でまとめることが妥当かどうか迷うところもあります。 しかしながら、メンタルに関する問題は現在の大きな課題であるこ とは疑いのない事実であり、労災申請に関しての問題を整理しておく ことは必要と考え、書き進めていきたいと思います。 したがって、次回以降の具体的な記載についてもかなり一般的にな りがちですが、その点はご容赦いただきたいと思います。                     弁護士 佐 藤 克 昭



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