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佐藤弁護士のなるほど講座

  

「過労死」の労災認定〜その5

今回は、「過労死」の労災認定〜その5です。  前回は、過労死認定基準として示されている時間外労働時間数に関 する基本的な考え方を踏まえて、さらにつっこんだ対応方法に触れま した。  今回は、「過労死」の労災申請の準備にあたって、留意する点を書 いていきます。    これまで述べてきましたように、「過労死」の労災申請にあたって は、労働時間の把握が重要です。  ではどのようにして、労働時間の把握をしていくかということです。  まず考えられることは、タイムカード等の会社に存在する労働時間 管理の資料です。  しかしながら、会社の方に「労災申請をするからタイムカードのコ ピーをください」と申し入れて、「わかりました」と速やかにコピー を出していただけないこともあるのです。  時には、そうした労働時間の資料が、「無くなってしまう」ことも ないわけではありません。  また、労働時間が、タイムカードなどの会社に存在する資料によっ て本当に明らかになるかどうかわからない場合もあります。タイムカ ードをいったん 押して、それから、さらに残業を続けるなどという ことが日常となっている会社も実際に存在していたことがあります。  こうしたことに対応するために、弁護士はいろいろと対応を検討す るわけですが、そうしたことを公開しますと、それにまた対応される 会社も出てきてしまうこともありますので、詳細をここで書くことは できません。  一方で、家族の方々に残された資料は、しっかりと分析することが 必要です。  携帯電話で、「帰るコール」を会社を出た時にしていたというケー スでは、その電話の時刻を、調査確認することで、仕事の終了時間を 推定するという手法を採用したケースもあります。  注意をしなくてはならないのは、こうした電話記録については、デ ーターの保管期間が比較的短く、時間が経過することで、その記録が 消えていってしまうことがあるのです。  どのような事案でも共通するのは、労災申請するか否かは別にして も、早い段階で、専門的な経験を有する弁護士等に相談をして、的確 なアドバイスを受け、関係資料の確保をしておくことが重要なのです。 家族の方も含めて、日記、メモ、カレンダーへの書き込み等が存在 していることもあります。 当事者が使用していたパソコン、携帯電話、仕事用の手帳、仕事で 持ち帰っていた資料の残りなどは、その仕事ぶりを再現するにあたっ ても、極めて重要な証拠となります。こうした資料は、決して焼却し たり、会社に返還したりしないようにして、手元に残して分析をして おくことが必要です。                     弁護士 佐 藤 克 昭



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