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「過労死」の労災認定〜その3
今回は、「過労死」の労災認定〜その3です。
今回は、前回予告しましたように、現行の過労死認定基準の内容とそ
れに基づいた労働者側の対応の心構えを、書いていきます。
理論的な部分は、必要に応じて書いていきますが、できるだけ実践的
に認定基準をどう把握して、労災申請に臨むのかを中心にしますので、
少し概括的になることはご理解ください。
「過労死」認定基準の基本は、「時間外労働時間がどれほどあったか」
です。
認定基準では、脳・心臓疾患が発症した日を基準に、30日を1ヶ月
として、前6ヶ月の、時間外労働時間を検討することになっています。
そして、発症直前の1ヶ月の時間外労働時間数が、100時間を超え
ることが認められる場合には、基本的に、業務との関係を「推認する」
扱いとなります。
「推認」という意味は、被災した(倒れられた)方に、特別な素因な
どがあったり、業務とは別の発症要因が明確に認められない限り、業務
に起因するものとして、「労災」に認定するということです。
また、直前1ヶ月の時間外労働時間数が、100時間を超えない場合
でも、前6ヶ月のそれぞれの平均時間外労働時間数を計算し(1ヶ月と
2ヶ月、1ヶ月 から3ヶ月というように順次平均をとるということで
す)、その平均時間外労働時間数が、80時間を超える場合も同様に取
り扱うとされています。
(この時間外労働時間数の算定は、正確には少し細かいところがあり
ますが、それは、具体的に相談を受けてください。)
したがって、脳・心臓疾患で倒れられた場合には、とりあえず、「労
働時間を把握する資料」を、しっかりと確保することが必要となります。
それは、労働内容などをメモするなりしている営業日誌であったり、
使用していたパソコンであったり、日記帳であったりします。
タイムレコーダーももちろん重要ですが、一定のケースでは、タイム
カードはとりあえず打刻することとなっており、そうした打刻以降にさ
らに会社に残って仕事をするということが常態化しているケースもあり
ます。その場合には、タイムレコーダーの示す労働時間を前提にしたも
のでは、実際の実労働時間を把握することはできません。
また、いつも職場を出た段階で、自宅に「帰るコール」をする方の場
合には、その携帯電話の通話記録を早い段階で、取り寄せることで、退
社時間を明確にすることができた例もあります。
通話記録は代表的なものですが、早い段階で、それらの記録を確保し
ないと、廃棄されてしまうものも多くあります。
監督署における「過労死」の認定に当たっては、労働時間が、大きな
決め手になりますので、とりあえずそれを確認できる資料をしっかり確
保することが極めて重要です。
一方、家族の方や、ご自身が、働き過ぎではないかと思われ、予防の
観点でどうしたらいいかというご相談も多くありますが、とりあえず、
ご自身や家族の方が、実際の労働時間を2〜3ヶ月つけてみることをお
すすめします。
その結果として、時間外労働時間(週40時間労働を前提にして計算
してください)が、80時間を超えているときには、「過労死予備軍で
ある」ということを自覚し、仕事の仕方や職場のあり方を考えていくこ
とが必要です。
次回は引き続き、こうした労働時間の問題について触れていきたいと
思います。
弁護士 佐 藤 克 昭

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