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佐藤弁護士のなるほど講座



          

    遺言と遺言をする能力

  

今回も引き続いて、遺言に関するお話です。

  遺言を作成することは、後々のトラブルを避け、円滑に相続手続を行う上でも、大切  なことであるということは、前回も述べたとおりです。   この2〜3年の相談などの中に散見されるものとして、遺言作成時における、遺言者  の状況に関する問題があります。   「遺言作成時には、認知症で、内容など理解できていなかったはず」等というもので  す。   確かに、遺言も法律行為ですので、その当時に、その内容について十分な理解する能  力がなければ、遺言そのものが無効ということになります。   とりわけ、その作成前に、医療機関において治療などを受けていますと、当然のこと  ながら、関係する相続人からは、上記のような疑問が出され得るともいえるでしょう。   具体的な裁判所の判断などについては、様々な判決が出ていますが、むしろ私がここ  で強調したいのは、そうした状況の中でも、遺言をしたいという意向をお持ちの方に対  して、どのようなことに配慮することが大切かという点です。   後々のトラブルを避けるために、遺言を作成するという視点から考えると、私として  は、そうした御本人さんの状況も含めて、依頼する弁護士などに状況をしっかり説明し  て頂き、必要な対応を取ることが必要だと思います。   私は、そうした状況をご説明頂いた場合には、治療を受けている医療機関の医師など  ともよく意見交換を行い、医師の方の立ち会いをお願いして、遺言をされる方が、遺言  の内容を理解しうる状況に、遺言作成時にあったか否かを、確認する対応を取ることに  しています。   また、公正証書の遺言を作成する場合には、公証人の方にも、そうした治療状況など  も説明をし、公証人の方が、後日「そのような状況にあることは全く説明がなかったの  で、関係者や弁護士が対応していることから、安心していたが、そのような説明をして  いれば、別にもっと慎重な確認をしたかもしれない。」などとお話をされることのない  ように、留意をしていくことが、本当の意味で、トラブルを避けることにつながると考  えています。   そんなことをしたら、遺言をすることができない人が出てくるではないかというお考  えの方もおられるかもしれませんが、私は、そのような場合は、やはり遺言ができない  ことを前提にして、対応を考えて頂くことが弁護士の役割ではないかと考えるようにな  っています。   裁判官もそうした対応を、弁護士関与の事件については、期待しているのではないで  しょうか?                                                               弁護士 佐 藤 克 昭    



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