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佐藤弁護士のなるほど講座



 

今回のテーマは遺言です。

 自筆の遺言と公正証書の遺言どっちがいいですか?と尋ねられたら  私ならやはり公正証書の遺言を勧めます。  遺言をしておくことが、後日の相続人間での争いを避けることになるということはよく いわれていることです。  遺言には一般的に自分で全てを書き上げていることが必要な、自筆証書遺言と、公証人 による公正証書遺言が一般にはあげられています。  とにかく遺言を作りなさいということになるのは  遺言をすることによりそれだけで、大きな意味が生じるのは、  「相続人となる方が、兄弟姉妹しかおられない方」の場合です。  この場合は、兄弟姉妹には遺留分が認められていないことから、遺言をすることでその 内容の実現が保障されることになるからです。  「自分には子供もいないし配偶者もいない。兄弟の子供達しかいないが、その人達とは 疎遠で、交流もなく、むしろ町内でお世話になっている方々に、もらってもらいたい。」 こういう想いの方は、とにかく遺言をお作りになられることが良いと思われます。  では、自筆による遺言と公正証書による遺言ではどう違うのでしょう。  そうした質問では、公正証書の方が、「将来その効力を否定されにくい。」ということ がよくあげられています。  それは、公正証書による場合は、公証人の先生が関与し、遺言をされる方の遺言能力な どを充分に検討して作成されることが前提になっているからです。(もっとも、作成する 側が、遺言をされる方が認知症などの治療をされていることを、公証人の方に説明するこ となく、その場だけの短い時間での対応で、公証人の先生が充分な検討をする知識を与え られていないケースもないわけではありません。)  しかし、私はそれ以上に、具体的な遺言の執行段階における対応に大きな違いがあるこ とを、指摘したいと思います。  公正証書の遺言を、具体的な内容を十分に検討し、遺言執行者の指定も含めて行うこと で、他の相続人の関与を必要とせず、相続登記などの執行が容易にできるという点です。  たとえば、不動産が2筆あり、相続人が3人存在しているような場合に、公正証書によ る遺言で、「今住んでいる居宅は長男に、もう一つの不動産を次男と三男で分けるように 」、と考えていたとしましょう。  公正証書による遺言ではなく、自筆証書の遺言で、上記のような内容を記載しておいて も、次男三男が、納得して印鑑証明証をあげて、実印の判を押してくれない限り、長男は 相続登記はできません。  次男三男が、協力しない場合は、調停や裁判などを起こす必要が残るのです。  しかし、公正証書の遺言で、居宅の土地建物を明確に特定して記載し、他の不動産も同 様にその内容を具体的に記載し、遺言執行者を選任する記載を行っておけば、遺言執行者 により、長男に相続登記を行うことができるのです。  後々、相続人に争いを残さず、速やかな遺言執行をお考えになるならば、公正証書によ る遺言が必要不可欠と私は考えています。                             弁護士 佐 藤 克 昭      





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