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福山弁護士の「飲み法題」

 

長時間労働の放置について安全配慮義務違反による慰謝料請求を認めた判決 教員超勤事件高裁判決〜その1

   1 忙しすぎる教師 「学校の先生たちが忙しすぎる」いつのころからだろう? そうした声を 聞くようになったのは・・・。最近、そうした現状に風穴をあける判決があ った。 京都市内の公立小中学校教員の恒常的な超過勤務について、京都市の安全 配慮義務違反の有無が問われた事件の控訴審判決が、2009年10月1日、 大阪高等裁判所で言い渡された。  京都地裁での一審判決(08年4月23日)は、原告9名のうち1名につ いて安全配慮義務違反を認め、被告京都市に対して慰謝料の支払を命じたが (金額は55万円)、高裁判決では2人増えて、合計3名について安全配慮 義務違反による慰謝料請求が認められた(金額は同じ55万円)。 2 教員の超過勤務と給特法 あまり知られていないことであるが、国公立の小中学校教員は超過勤務を しても、超過勤務手当は一切支給されない。  これは1971年に「国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与 等に関する特別措置法」(いわゆる「給特法」)が制定され、教員には俸給 月額の4%に相当する教職調整額を一律支給するかわりに、労基法37条 (時間外労働に対する割増賃金支払義務を定めた条文)を適用除外して超過 勤務手当を支払わないと定めたからである。 いくら働かせても残業代を払わなくてよいというのは、2006年に財界 が導入をもくろんだホワイトカラー・エグゼンプションと同じだ。当時、マ スコミはこれを「残業代ゼロ法案」、「過労死促進法案」と批判し、結局政 府は法案化自体を断念せざるを得なくなったが、教育界ではすでに30年以 上も前にこれが先取りされていたのである。  さすがに立法者もこの法律によって無限定な超過勤務が生じることを恐れ たのであろう。  一応、@原則として超過勤務は命じないとした上で、A例外的な超過勤務 を教職員会議に関する業務等の4項目に限定し、B臨時または緊急にやむを 得ない必要があるときに限るなどの歯止めが設けられた。  ところがこれは有名無実化し、超過勤務手当を支払わなくてよいという側 面だけが強調され、教員の超過勤務は青天井に増大していった(1966年月8 時間→2006年月34時間:文科省調査による)。                          −− 次号につづく (マスコミ9条の会のご了解を得て同会HPより転載させていただきました) 弁護士 福 山 和 人


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