1. 秋田智行
市民六法

「感度」のある弁護士を目指して

この度、京都法律事務所に入所するに当たって、他の所属弁護士の方々と同じく、ブログを書くことになりました。定期的な更新ができるかどうか不安ではありますが、よろしくお願いします。

さて、昨今のAI(人工知能)技術の発達は、著しいものがあります。弁護士の仕事も、将来的には、AIにとって代わられるのではないかとの声も、まことしやかにささやかれています。

AIは、単純作業や大量の情報を素早く正確に処理する仕事が得意だとされています。過去の膨大な事案から、似たような事案を抽出・分析し、その事案を解決するために使われた「規範」を見つけ出すに当たっては、AIの素早く正確な情報処理能力が役立つこともあるかもしれません。

しかし、現実には、全く同じ事実関係の事案は一つとしてありません。使われるべき「規範」は同じであったとしても、それを具体的にどう適用すべきかは、個別の事案によって異なります。「規範」を個別の事案に適用するにあたっては、その事案の具体的な事実関係に即して、これを適切に関連付ける必要があります。

そして、何よりも、紛争は、ほかでもない、生身の人間のぶつかり合いによって生じます。いざ紛争に直面して、もうどうにもならないと、藁にもすがる思いで相談に来られる方も多いかと思います。人間は、ときには、矛盾した不合理な選択をしてしまう、不条理な存在です。依頼者が、何を思って、相談にきたのか、紛争に至った過程・背景に思いを致し、その思い・感情を適切に汲みとった、具体的な法律論を展開してこそ、真の事案の解決につながると思います。

法律は、無機質な論理の積み上げではなくて、豊かな人間性に支えられて、初めて、実用に足るものになるのではないでしょうか。依頼者の陥った苦境に思いを致して、これを汲み取ることのできる人間的な「感度」こそ、弁護士の仕事を意義のあるものにすると思います。ですので、今後、弁護士の仕事がAIにとって代わられることはないと信じていますし、私も、そのような「感度」のある弁護士でありたいと思います。

AIも、利用できる部分はうまく利用して、皆さんが、相談してよかったと思ってもらえるような仕事をすることができればと思います。どうぞ、これからよろしくお願いします。