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請負会社に大量出向ー松下系企業、「偽装請負」行政指導後違法性回避かー
(8月1日付 朝日新聞)
今月は、偽装請負に関する記事が目立ちました。松下の外、トヨタの系列会社、キャノ
ンについても報道がありましたが、これらの超優良企業とされる会社が労働者派遣法に反
する脱法行為を行っていた可能性があります。
派遣と請負の区別は、やや専門的になりますが、労働者に対する指揮命令を実際に行っ
ているのは誰か、材料・機械は誰が提供しているかなどで区別されています。両方とも注
文者(発注元)が行っていれば、請負ではなく派遣です。
派遣と請負を区別するのは、労働者を派遣として受け入れている企業が、本来労働の指
揮命令を行っていることに伴う労働関係上の法的責任を負っているためです。従って、派
遣を請負と偽ることは、労働者に指揮命令を行っていながら、その法的責任を逃れること
を意味します。そして、やはり、シャープの亀山工場やトヨタのグループ企業で労働災害
を隠したという報道がなされました。(8月12日、13日付 朝日新聞)。
また、労働者派遣法には一定の場合、派遣先に直接の雇用責任が生じることがあります
が、この雇用責任もこれまで逃れてきた可能性があります。しかも、実際は派遣している
のに請負と称して労働者を直接雇用している会社では、ほとんどが低賃金で雇用期間も短
期で、社会保険にも加入していない実態があります(8月10日付朝日新聞)。
企業が利益を目指すのは当然かも知れません。しかし、法律違反を承知でそのしわよせ
を労働者に負わせるというのはいかがなものでしょうか。
最近、企業のコンプライアンスが叫ばれていますが、まだまだ法令遵守という風土と文
化は育まれていないようです。労働局や社会保険庁の指導がなければ是正しないようでは
コンプライアンスなどおこがましいというものです。
弁護士 高 山 利 夫

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