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厚労省、中間報告を見送りー労働契約法・労働時間法制見直しー
(朝日7月19日付朝刊)
厚労省、中間報告を見送りー労働契約法・労働時間法制見直しー
厚生労働省は、現在、雇用契約の基本ルールを定める労働契約法の制定と労働時間法制
の見直しをすすめています。これに関して、7月19日付朝日は、厚労省が当初予定して
いた審議会での中間報告の取りまとめ作業が、労使双方の反発のため見送りとなったこと
を報じています。
この間、政府がすすめてきた規制緩和の流れは、本来労働者を保護することを目的とし
ているはずの労働基準法などを大きく変えてきました。今回の労働契約法と労働時間法制
の見直しも、一連の規制緩和による労働者保護の後退が色濃いものとなっています。
1つは、解雇の金銭解決制度の導入の問題です。この制度は、裁判で解雇が無効とされ
ても、一定の(おそらくは低く押さえられる)金銭を使用者が支払えば、労働者を企業や
職場から追い出すことができるというものです。ここには、憲法27条が保障する勤労す
る権利や雇用保障という考え方は排除されているようです。理由のない解雇を強行した企
業や使用者を保護する必要があるのでしょうか。
もう1つは、どれだけ残業しても残業代を払わなくてもよいとする「自律的労働制度」
なるものを作るという問題です。これはあまりにも企業や使用者に虫のいい話です。今で
も、例えば月30時間を超えると実際残業しても残業代を払わない企業があります。時折、
有名企業や大学などが本来払うべき残業代を払っていなかったとして、労働基準監督署の
指導を受け、何億、何十億 と残業代を支払ったことが報道されています。過労死や自殺
過労死は後を絶ちません。そもそも、今の企業社会の中でどれだけの人が「自律的」に働
くことができているのでしょうか。制度の名称も実態をことさらに偽っているように思わ
れます。このような制度は百害あって一利なしです。
最近、格差社会に関する議論が目を引きます。企業とそこで働く何千万人の労働者との
間の労働をめぐる格差について考えざるを得ません。
弁護士 高 山 利 夫

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