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高山弁護士のニュース時評


        

『イラク陸自撤退決定−月内開始、8月完了』

(朝日6月20日付朝刊)  小泉首相が、6月19日、イラク南部サマワに派遣している陸上自衛隊を撤退させるこ とを決定したという報道がされました。  自衛隊のイラク派兵は、イラク特別措置法に基づくもので、その派兵の目的は、人道復 興支援と安全確保支援にあるとされていました。  しかし、アメリカのイラクに対する攻撃と占領そのものが、国際法上正当性を欠くもの でした。国連の正当な決議もなく、大量破壊兵器もはじめからなかったからです。ですか ら、自衛隊をイラクへ派兵すること自体、アメリカの違法な戦争に荷担することになるの ではという当然の疑問がありました。  しかも、自衛隊はサマワで何をしていたのでしょうか。6月19日付朝日朝刊によれば 、病院等に267回の医療支援、給水5万4000トン、道路、橋27カ所の復旧、整備 (継続距離87.9キロ)、学校34校の復旧・整備、医薬品倉庫など医療施設27カ所 の復旧整備、が陸上自衛隊の主な活動実績だそうです。 この内容なら陸上自衛隊が2年 以上も派兵される必要があったのでしょうか。別に自衛隊でなくても民間の建設会社やN GOの方が効率的で復興支援にやくだったのではないでしょうか。しかも、この新聞報道 は、既に1昨年以降、陸上自衛隊がイラク住民に給水をしていないことを報じていません。 マスコミは、イラクの自衛隊の活動の実際を見ていないか、知っていても報道しないので しょうか。  それから小泉首相は、航空自衛隊の輸送支援活動は、継続、拡大する方針だと報道され ています。では、航空自衛隊は、イラクで何をしているのでしょうか。航空自衛隊がイラ クで使用している輸送機はC130輸送機と呼ばれているもので、完全武装の空挺隊員6 4名(通常の搭載人員は92名)を載せることができるそうです。航空自衛隊は「安全確 保支援活動」をしていたはずですが、イラク国民の安全を確保しているのではない、アメ リカ軍兵士の安全を確保する活動をしているのでしょうか。これまで、そして今、航空自 衛隊がイラクで何をしているのか明らかにされるべきではないでしょうか。  自衛隊のイラク派兵は、世論を二分しました。平和主義の憲法を持つ日本が違法な戦争 に加担するのではないか、或いは、専守防衛の自衛隊をイラクへ派兵するのは正しくない のではないか、という多くの声がありました。また、現地イラクでは「自衛隊はサマワで は何もしていない」、「道路も学校、病院も全く変わっていない」、「サマワでは大量の お金が大きな部族の長に支払われている」という声も聞かれるとのことです。ですから、 イラクからの自衛隊の撤退は陸上自衛隊であると航空自衛隊であるとを問わず当然として も、イラクで自衛隊が実際にどんなことをしたのか。具体的な事実に基づく検証が必要な のではないでしょうか。                                                        弁護士 高 山 利 夫



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