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岡根弁護士のぼやき論壇

  
  

検察官がウソついたらあかんよなぁ

 6月16日、京都弁護士会の会員62名に上る弁護団を組んだ国家賠償請求が提訴 された。ちなみに、私も弁護団の一人である。応援団に近いが・・・  どういう事件かというと、友人ら4名でコンビニに行ったところ、そのうち1名 (成人)が万引きをしてしまった。店員に見つかり注意された際、ここで問題となる 少年(当時)が、万引きなどしていないにもかかわらず、おまえも万引きしただろう と詰め寄られたことに腹を立て、店員の胸ぐらをつかむ暴行を加えた。他の友人(成 人)は店員を殴ったかもしれない。万引きの共謀はしていない。しかし、その場で現 行犯逮捕(逮捕罪名は傷害罪)された。それに端を発する。  少年は、当然殴ってなどいないので、取調でも「殴ってない。胸ぐらをつかんだだ け」と説明した。警察の取調でも殴ったことは否認し、検察官の取調でも検察官に対 して殴っていないと訴えた。  少年に対して、強盗致傷として勾留がなされたことから、被疑者段階から国選弁護 人が選任されることになった。そこで、ある若手弁護士(修習生の頃うちの事務所で も研修したことがある)が国選弁護人に選任され、代用監獄(警察の留置所)に会い に行ったところ、少年からは、「殴っていない」と打ち明けられた。罪名からして当 然弁護人としては、「やっていないことはやっていない」と答えるように助言をする。 もちろんウソはダメだけれど、黙秘もできるし、事実でないことは認めてはいけない、 一旦ウソの自白をさせられればそれを回復することは不可能に近いという現状を伝え ることになる。  彼(弁護人)もきっとそのような説明をしたのであろう。  弁護人からの助言もあり、少年は、事実を主張し続けた。「殴ってはいません。胸 ぐらをつかんだだけです」。  ところが、取調に当たった検察官は、「そんなん嘘や。お前らの事なんて信じへん わ。」と大声で怒鳴りつけ、「お前らは腐ってる、クズ!」、「お前としゃべってて も、話にならへん。お前らが何と言おうと強盗致傷で持って行く。とことんやったる からな!」などと、おおよそ公益の代表者としての立場を忘れたかのような暴言を吐 いた。その上、調書をとることなく30分ほどで「お前としゃべってても話にならん。 帰れ。」と少年を代用監獄に帰した。  弁護人が抗議をすると、理由はわからないが取調担当の検察官が交代になったので あるが、その代わった検察官も、少年に対して、「あの弁護人何年弁護士やってるか 知ってるか。刑事事件のことなんにも解ってない」、「あんな弁護士がついて運が悪 い」として、弁護人の言うようにしていたら不利益が及ぶような話しをし、弁護人と の信頼関係を壊すような言葉で、自白を強要した。断っておくが、彼は弁護士として の年数はたしかに短いかもしれないが、優秀な刑事弁護人であり、あんな検察官ごと きに小馬鹿にされるような仕事はしていない。  この話を聞いて、私は、たまに刑事事件も扱う者(刑事弁護人)として、許し難い 怒りを覚えた、と同時に、検察官の程度の低さにあきれた。この程度の低さにはさら につづきがある。  この事件では、共犯とされる成人らは、万引きした本人は起訴猶予処分(起訴もさ れないので裁判にもならない)、他の2人は傷害罪で起訴され、執行猶予つきの判決 を受けた。  ところが、この取調に当たった検察官は、思い通りの(ウソの)自白をしなかった 年や防御権の限りを尽くした弁護人を逆恨みしてか、なんと、強盗致傷として家庭裁 判所に事件を送ったのだ。他の共犯者のと間の公平など全く考えていない。  案の定、家庭裁判所は、傷害は認めたが、最初からおおよそ認められるとも思われ ない強盗致傷は否定した。(あの証拠で、強盗致傷が成立すると考えるような人が司 法研修所を卒業したなんて、考えたくない・・・)  さて、この提訴に当たって、大仲土和・京都地検次席検事は、「訴状を受け取って いないので詳細は不明だが、原告が主張しているような事実はなかったと承知してい る」との談話を発表した。  きちんと内部での調査をしたのかどうか解らないが、大仲次席検事の主張が正しい とするならば、取調に当たった検察官は、次席検事にウソの報告をしたことになる。  「おまえら腐っている」と怒鳴り散らした検察官が、ウソはいかんよ、ウソは。                             弁護士  岡 根 竜 介



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