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岡根弁護士のぼやき論壇

  
  

裁判員裁判 その1 〜期待と不安が〜

 最高裁判所のホームページには、裁判員裁判を導入する理由として「国民のみなさんが 刑事裁判に参加することにより,裁判が身近で分かりやすいものとなり,司法に対する国 民のみなさんの信頼の向上につながることが期待されています。国民が裁判に参加する制 度は,アメリカ,イギリス,フランス,ドイツ,イタリア等でも行われています。」とあ ります。まさに、「期待」するポイントですよね。(ただ、被告人にとってどうなのか、 という視点がないのは、「あぁーぁやっぱりな」という感じです。一番大切なところなの に・・・)  現在、日本でも、実は、陪審裁判制度という枠組み自体はあるんです。旧憲法の下で実 際に行われていたことがあって、いったんは休止するとしただけで、今は、眠っているだ けなので、制度としては復活させることもできるのです。ところが、今回は、陪審裁判を 復活させるのではなく、裁判員制度という新しいシステムができあがりました。  裁判員制度の裁判では、3名の職業裁判官とともに、6名の一般市民の中から選ばれた 裁判員が、有罪か無罪かだけの評決のみならず、量刑(どのような刑罰を適用するのか、 例えば、懲役を何年にするのか等)判断にも参加して、判決を言い渡すことになります。  京都地方裁判所でも、裁判員裁判を行うことができるように、一番大きな法廷(101 号法廷)が少し「リフォーム」されました。いわゆる被告人席から見て取り囲むようにや や丸みを持った長机がど〜んと置かれています。そこに9席、立派な椅子が並んでいます。 裁判員に選ばれれば誰もが座ることのできる椅子です。(まぁ、真ん中の3席は、裁判官 が座るんじゃないかと思いますが・・・)  今までは、傍聴席しか、普通の人は座れませんでした。まれには、証人席や被告人席に 座らざるを得ないこともあったでしょうが、段の上に座ることは考えられませんでした。  裁判が始まると、合計9名の裁判官・裁判員が法段に上がることになります。  ここで法段について一言、市民が参加することでもありますし、そもそも1段高いとこ ろからまさに「見下ろす(見下す?)」必要はないのですから、被告人と同じ目線で、裁 判をすればいいと思いませんか。でもやっぱり、裁判所というところは「裁判官は上から ものを見る必要がある」と考えているようですね。  以前裁判官が、高いところに席があるのは、「法廷を見渡し、傍聴席を含めて把握する 必要があるからです。決して見下ろしているわけではありません」といっていましたが、 それはいつも「(段)上からものを見ている人」の言い分に過ぎません。  この法廷を見た時点で、裁判員制度が導入されても、刑事裁判が、基本的には「上から 見下す」という姿勢に変化はないんだなぁと、厭世的な気分になってしまいました。  もし興味があれば、一度、101号法廷を見学してみてください。  他の法廷とは確かに少しちがった形をしています。ラウンドテーブルの法廷を連想して、 「身近」になったと思う人もいるかも知れません。  でも、この形を見て、最高裁(大法廷)のミニチュア版かいな、と思ってしまうのは、 私1人ではないと思うのですが、どうでしょうか。                            弁護士  岡 根 竜 介