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黒澤弁護士の"知ってますか"

 

消滅時効と内容証明による督促

貸金等について請求書を送っている限り、消滅時効にかからないと誤 解されている向きがありますが、単に請求書を送るだけでは、時効は中 断することはありません。  ただ、時効期間経過間際に送付をした請求書(催告)については、民 法上、催告から6ヵ月以内に裁判上の手続その他の確定的な中断事由を とることを条件として時効が中断すると定められています。 これは、時効完成間際に正式の中断手続(たとえば訴訟など)をとる のが時間的に間に合わないことにより時効が完成するのを防ぐために簡 易な中断方法を認めたものです。 このときの6ヵ月の起算点は、請求書が相手に届いたときから6ヵ月 と計算することになりますので、たとえば時効期間が6月に満了する場 合でも、4月に請求書を発送すれば、10月までに正式の中断手続をと らなければ中断の効果は生じません(12月ではない)。 また、6ヵ月延長された期間内に再度請求書を発送するとさらに6ヵ 月延長されるようにも思われますが、そもそも催告に条件付の時効中断 の効果を認めたのは、時効完成間際の救済措置として手続き的猶予を与 えるために過ぎませんから、二度目の請求書を発送したとしても、さら に6ヵ月延長されることはありません。 それでは、請求書を相手方が受領せず、留置期間経過により、差出人 に返送されてしまった場合、時効中断の効果が生じるのでしょうか。 この点については、積極・消極両説がありますが、東京地裁昭和61 年5月26日判決は、不法行為に基づく損害賠償請求を、内容証明郵便 により発送したが、不在で配達されず、返送された事件で、6ヵ月の時 効中断の効果を認めました。 時効を中断すれば、権利行使の可能性は残されることになりますが、 時間の経過は権利の存在を立証することを非常に難しくしてしまいます。 時効が問題となるような時期になる前に早めに解決を図ることが何より 大切でしょう。 なお、上記では、単に「請求書」と記載をしましたが、現実には、相 手方に時効期間内に請求書(催告)が届いていることを証明しなければ ならないので、請求書(催告)は内容証明郵便で発送することが必要と なります。    弁護士  黒 澤 誠 司



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