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福山弁護士の「飲み法題」

 

年休は当日の朝に電話するだけで取れるか?

   Q 年休はいつまでにどういう方法で請求すべきでしょうか。当日の朝 に勤務先に電話して上司に「今日、年休を取りたい」と伝えて年休を 取ることはできますか? A できます。ただし使用者が事後的に時季変更権を行使すれば年休で  なくなる可能性があります。   年休(年次有給休暇)は、労働者の時季指定権の行使(休暇の開始  日と終了日を特定して年休を取る旨使用者に通知すること)により成  立します。使用者の承認は不要です。   この時季指定の方法について、法律上の制約はなく、口頭の通知や  電話やFAX、電子メール等、通常社内のコミュニケーションに利用  されている手段で、使用者が閲覧可能な状態におけばよいと考えられ  ています。     時季指定の時期についても、法律上の制約はありません。常識的に  は希望日の前日の終業時刻までになることが望ましいと思われますが、  当日の朝、始業時刻の直前に連絡した場合でも、直ちに時期指定が無  効となるものではありません。 ただし、労働者の指定日の年休取得が、事業の正常な運営を妨げる  場合には、使用者は時季変更権を行使することができるとされていま  す。これは年休を認めない旨を告げるだけでよいと解されており、代  替日を指定する必要もありません。この場合、一旦成立した年休の効  力は消滅します。   この時季変更権の行使は、事業の正常な運営を妨げるかどうかを判  断するために必要な合理的期間内(遅くとも年休開始前日まで)に行  わなければなりません。   問題は、労働者の時季指定が年休開始直前や当日の朝になされたよ  うな場合です。事業の正常な運営を妨げるかどうかを判断するために  は一定の期間が必要なため(たとえば代替要員を確保できるかどうか  の判断等)、労働者の時季指定が年休日の直前や当日の朝になったよ  うな場合は、年休開始後の時季変更権行使が適法とされることがあり  うる点、注意が必要です。   なお、労働者の時季指定権の行使を、使用者の時季変更権行使のた  めに必要と思われる時期までに行使するよう就業規則で制限すること  は、その期限が合理的なものである限り有効と解されています(電電  公社此花電報電話局事件最高裁判決S57.3.18は年休希望日の前々日の  勤務終了時までという定めを有効とした)。   弁護士 福 山 和 人


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