1. >
福山弁護士の「飲み法題」

 

道州制を考える〜その2

    今回は道州制の憲法上の問題点について考えてみたい。 憲法92条の地方自治の本旨とは  そもそも憲法92条の「地方自治の本旨」とは、地域住民の意思にも とづいて(住民自治)、地方自治体が自主的自律的に行政を行うことで ある(団体自治)。 その意味で、憲法上保障された地方自治を発展させるためには、まず 地域住民の意思を反映させる制度的な枠組みを強化すること、とりわけ 住民生活に密着した市町村の権限を強化することが求められている。  また、地方自治体が住民のニーズに応えて社会保障や教育、雇用、医 療、農林漁業、環境等の各分野で充実した住民サービスを実施するため には、財源・権限の保障が不可欠であり、憲法92条はそのことをも保 障しているというべきである。 道州制は「地方自治の本旨」に反する  ところが前回述べたように、結局、道州制の狙いは、社会保障のスリ ム化と都道府県を超えた巨大開発を進めることにある。そのことによっ て大企業やゼネコンは儲かるかもしれないが、開発の対象地域とそれ以 外の地域とで不平等な財政配分をもたらし、僻地の地方自治体の衰退を 招くおそれがある。  また道州制は、市町村についての更なる合併とセットで提案されてお り、住民自治の後退を招くおそれが強く、また地方自治体の徹底したス リム化を前提とするものであって、二重の意味で憲法92条の保障する 「地方自治の本旨」に反するものといわざるを得ない。 ナショナルミニマム崩壊の危険性  道州制が導入されれば、我が国の地方自治は全く形骸化してしまうの であろう。  さらに道州制においては、国の任務を外交・軍事・司法などに限定し、 社会保障や福祉などの行政サービスを地方に押しつけることが企図され ている。これでは社会保障のナショナルミニマムが崩壊する危険性があ る。 今求められていること  総選挙で政権をとった民主党に対して、日本経団連の御手洗会長は開 票日翌日に、道州制導入について具体的な成果を示すよう望むと述べる 等、道州制の推進を迫っている。  深刻な金融危機・不況の影響が地域経済を襲っている今日、こうした 策動を許さず、憲法の「地方自治の本旨」に反する道州制の導入と更な る市町村合併の押しつけに反対するとともに、地方自治体の財源確保を 図ることが極めて重要である。 弁護士 福 山 和 人


<トップページへ>