1. >
福山弁護士の「飲み法題」

 
   

お酒と映画B〜『スティング』とアイリッシュウイスキー

   今回も映画とお酒をめぐる小ネタを一つ。  仕事柄、人の嘘に出くわすことがときどきあります。民事裁判では、 当事者の言い分が180度違うこともあります。真実は一つですから、 どちらか一方が嘘をついていることになりますが(ときには双方が嘘 をついている場合もあります)、人の記憶は曖昧で、証人自身が真実 と思いこんでいることも多く、そういう場合には嘘をついている自覚 がないだけに暴くのは一苦労です。  さて昨今、振り込め詐欺とか、オレオレ詐欺などの事件報道が新聞 紙上を賑わせていますが、嘘を生業とする詐欺師は映画の世界でもよ く出てきます。詐欺師を描いた映画の代表格といえば『スティング』 でしょう。  この作品は1973年のアメリカ映画で、アメリカン・ニューシネ マの代表作『明日に向って撃て!』で共演したポール・ニューマンと ロバート・レッドフォードが再共演し大ヒットしました。  この映画は、1936年のシカゴを舞台に詐欺で日銭を稼いで生活して いた1人の若者(ロバート・レッドフォード)が、自分の師匠を殺害 したマフィアに復讐するために、伝説の賭博師(ポール・ニューマン) と協力し、得意のイカサマでマフィアをペテンにかける様をコメディ タッチで描いたものです。  劇中、ポール・ニューマン演じる伝説の詐欺師が酒場のカウンター に腰をおろしざま注文するのが「Bushmills(ブッシュミルズ)」で す。字幕では、単に「ウィスキー」としか出ませんが、これは世界最 古の蒸留所と言われるアイルランドのブッシュミルズ蒸留所で製造さ れたアイリッシュ・ウィスキーです。  ここでわざわざ「ブッシュミルズ」を登場させたのは、ポール・ニ ューマン演じる伝説の詐欺師が実はアイルランド移民であることを想 像させます。  そういえば、映画『タイタニック』でもアイルランド移民に対する 差別が描かれていました。  一言のセリフから、アメリカ社会の中で苦労しながら伝説の詐欺師 として生き抜いてきたのだろうかと、主人公の生き様に思いをはせて しまいました。  みなさんはウイスキー発祥の地と言えば、「スコッチ」で有名なス コットランドと思われるかもしれません。しかしウイスキー発祥の地 は実はアイルランドです。  アイリッシュウイスキーは蒸留回数が3回と、ほかのウイスキーよ りも多いため、その分、軽くサラッとした飲み口になります。ウイス キーは苦手という方でも、爽やかな風味のアイリッシュウイスキーは オススメです。  ブッシュミルズをちびちびやりながら、『スティング』でも見て、 移民の歴史に思いをはせるというのはいかが? 弁護士 福 山 和 人


<トップページへ>