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福山弁護士の「飲み法題」


  
       

私が国民投票法案に反対する理由

     今、国会で憲法改正のための国民投票法案が審議されている。しかし、私はこの法案に 反対である。何故か。理由はただ一つ、法案を提案しているのが政治家だからである。  私は政治家は全て悪党だとか、信用できないというつもりはない。しかし憲法改正やそ れにつながる国民投票法案については、政治家が提案すべきものではないと思っている。  もともと憲法とは国民が政治家を縛った鎖である。国民投票法の制定とは、その鎖を外 すための鍵を、縛られている当の政治家に渡す行為に他ならない。  古今東西を問わず、権力者は民衆に対して、重税を取り立て、戦争に駆り出し、文句を 言うと投獄するなど、散々な目にあわせてきた。憲法99条が「天皇」「摂政」「国務大 臣」「国会議員」「裁判官」「その他の公務員」に憲法尊重擁護義務を負わせているのは、 その人たちがかつて過ちを犯して、国民に惨禍を負わせた前科があるからである。その意 味で、憲法99条はいわば前科者リストと言ってよい。人間は常に過ちを犯す。憲法はそ れを前提としている。日本国民は多大な犠牲の上に立って、権力者が二度と過ちを犯さな いよう憲法という鎖で縛って、国民のために働かせるようにしたのだ。  改憲の要求はいつもいつも権力者から出てくることを忘れてはならない。要するに彼ら は鎖をはずしてほしいのだ! それのみならず、彼らは逆に国民の鎖をかけることまで狙 っている!(何と、自民党は憲法改正により国民に国防義務を負わせ、そのような「憲法 」を尊重擁護すべき義務を国民に負わせようとしている!)  国民投票法案は、「前科者」である「国務大臣(安倍首相ら)」と「国会議員(自民・ 公明・民主の議員)」が提案している法案である。今、彼らは満面の笑みを浮かべながら、 猫なで声で「鍵をお渡しいただけますね」と国民に求めている。私たちは彼らを信用して いいかどうか、そして鍵を渡した後にどういう世界が待っているかをよく考える必要があ る。そこに、九条のない世界、日米同盟軍が全世界で「テロとの闘い」に明け暮れる世界 が待っていると危惧するのは私だけだろうか? 日本国憲法自身、「この憲法が国民に保 障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない(憲 法12条)」と定めていることの意味を、私たちは今一度、想起しなければならないと思 うのである。 弁護士 福 山 和 人



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