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福山弁護士の「飲み法題」


  

 民営化について考える(その3)

          最近の民営化をめぐる議論を見ていると、あらゆる問題が民営化さえすれば解決するか のように述べられていることに驚かされる。何の論証もなく「官」は悪、「民」は善とい う決めつけに基づいて、民営化万能論ともいうべき無邪気な議論が展開されているのは、 ほとんど思考停止状態と言うほかあるまい。これも前首相の「ワンフレーズ・ポリティク ス」の悪弊であろうか。  その典型を、京都市職員の一連の不祥事に対する市当局の「改革」にも見ることができ る。京都市では、2006年4月以降、市職員による覚せい剤使用、児童買春、生活保護 費の詐取、ATM機破壊などの不祥事が相次いで、9人もの逮捕者を出すという異常な事 態が生じた。京都市は、ゴミ収集等にあたる環境局の技能労務職員に多くの逮捕者が出た ことから、「環境局における『解体的』改革」と称して、あろうことかごみ収集業務を5 0%民間委託し職員を50%削減するという「対策」を発表した。  しかし、ゴミ収集等を担当する職員に不祥事が多発したのは、京都市が一部同和団体に 対して選考も含めて職員採用を丸投げするといういわゆる「優先雇用」を続けてきた結果、 服務規律を徹底できなかったことにある。このことは市当局も認めていることだ。そうだ とすると、その対策は不透明な選考手続を改めるとともに服務規律の徹底を図ること、同 和がらみの不公正な慣行を一掃すること以外にあり得ない。しかし、市当局は一部同和団 体への種々の便宜供与を温存したまま、「改革」の名の下にゴミ収集業務を民間委託する というのである。なぜ民間委託すると不祥事が根絶されるのか、私には全く分からない。 民間業者なら不祥事は発生しないとでも言うのだろうか。あるいは民間業者なら不祥事が 発生しても市の責任ではないといえるからだろうか。よく分からない。そこには、「民間 委託」とか「民営化」という流行に乗ることで、「改革」っぽく見せたいという安っぽい 意図しか感じられない。  JR西日本の列車事故では、民営化後のJR西日本の利潤追求優先体質が問題とされた。 また、埼玉県ふじみ野市のプール事故では、プール管理を委託された民間業者が、排水口 を針金で固定するというお粗末な措置を取っていたことが判明した。また民間確認審査機 関による建築確認審査を認めた結果、耐震偽装事件が発生した。民営化の本家であるイギ リスでも、鉄道民営化後、鉄道事故が多発し、学校給食の民営化により、ファーストフー ド給食が主流となる等の問題が生じている。民営化は本質的に安全性や公共性との矛盾を はらんでいるのである。  そもそも民間企業である以上、「稼ぐ」ことが第一義になるのは当然のことだ。安全や 安心を売りにしている企業でも、ひとたび採算ラインぎりぎりとなったときに、採算を犠 牲にしてでも安全性や公共性を優先するということはあり得ない。もう一度言う。民営化 すれば利益第一主義になるのが当たり前なのである。そういう認識なしに公共サービスの 民営化を語るのは、余りにも無邪気すぎる。  京都市は、一連の不祥事で市民の批判が噴出する中、10月からゴミ袋の有料化を導入 するべく無料ゴミ袋を各家庭に配布している。この無料ゴミ袋配布業務の委託を受けた民 間業者には1軒47円、配布漏れ等による再訪問の場合は63円の委託料が支払われてい るという。京都市の世帯数は65万余りだから、ゴミ袋配布だけで3000万円以上の公 金が動いていることになる。こういうことを見るにつけ、民間委託とか民営化というのは、 結局、民間資本に金儲けの機会を提供するために行われていると思ってしまうのは私だけ だろうか?    弁護士 福 山 和 人