今年もあと7日余りとなりました。なるほど講座として、精神疾患に関する労災認定判断指針の解説を、3回ほどしたところから、精神疾患に関する判断指針を近いところで再検討するとの情報もあり、中断をしたままになっておりました。
来年の予告=「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」の検討
「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」が10月から開催されており、現在も検討会が継続中となっています。
この検討会に資料として提出されている内容は、現時点で厚生労働省が、メンタル関係の認定手続きをどのように運用し、どのような点が議論になっているか、またそれに関する判例の動向や、医学的専門家の方々がどのような視点で検討をしているかを知る上で、極めて重要なものとなっています。
来年以降は、こうした資料からの検討や実際に労災申請を行い、準備などをしていく上での課題を、見ていきたいと思います。
今年の労災認定獲得、損害賠償事件の整理と傾向
今年も、「過労死」(脳心臓疾患関係労災)の労災申請において、労災認定を受けています。
海外出張が多く、かつ、業務的に負担が過重となっている中で発症した方の事案です。
この事案の特徴は、発症前6ヶ月の労働時間が、平均で80時間を微妙に超えるというものであり、出張時の労働時間をどう捉え、出張に関しての特別な過重性をしっかりと付加的要素として捉えてもらえるかでした。
こうした、発症前6ヶ月の時間外労働時間が、認定基準の平均80時間を超えるか超えないかが微妙な事案においては、漫然と労働時間数を延ばすことに執着してしまうなど、「量」にのみこだわるような考え方は、かえって発症の経過を説得的に示すことにはなりません。
発症前6ヶ月について、できるだけその労働実態を再現する努力をすると共に、「付加的要素」である、過度の出張、責任の過重、を立体的に捉え、その上で、出張についての評価を、実際の負担が明確になるような整理が必要です。
最近の認定手続きの進行は早い!
注意すべきは、最近の認定手続きにおいては、申請から早ければ6ヶ月で、結論が出るということです。
これは、労働行政においても、「迅速化」の要請が強く進められており、担当官の負担が大きくなっています。その反面として、短期間でしっかりとした調査と報告が可能なように、申請する際にも、担当官の視点に立った調査と資料を整理し、問題意識を共通化する努力をしていくことが必要です。
過労自殺事案でも労災認定
今年も、過労自殺事案でも労災認定を獲得しています。
事案を公表することはできませんが、転勤とその後の業務過重と支援の不足、その結果としての長時間労働が重なって発症したとされたものや、人員整理と業務変更に伴う責任の集中、その結果としての長時間労働が重なって発症した事案があります。
大きな1つの出来事を出発点として、それに伴う業務の変化と責任の偏在それを克服しようとして長時間労働にさらされるというところは共通しているものがあります。
いずれの事案も、民事の損害賠償も含めて、解決をしています。
ホームページを通じての相談から発展したものも含まれており、全国的にも相談を頂く事案が増えてきています。
過労事案以外の労災事案の損害賠償事件
今年の特徴の1つとして、過労事案以外の労災事案について、労災認定を受けた後の損害賠償事件の請求に関する相談が増えていることがあげられます。
建築現場での事故、職場における機械などによる事故等で、亡くなられたり、後遺症を残すような大きな被害を受けている方の相談です。
労災補償制度は、事故によって生じた全損害を補填する形で給付が出されるわけではありません。
労災認定され遺族年金が支給されたり、後遺症認定を受けて、一時金が支給されたりするわけですが、その中には、いわゆる慰謝料や本来賠償されるべき損害額全額が支給されてはいないのです。
働き盛りの方が、事故で亡くなられたり、後遺症認定を受けた場合には、その事故の経過を検討する中で、会社の安全配慮義務に違反する内容が認められる場合には、慰謝料や残余の損害賠償の請求を行う権利が残っているのです。
今年は、そうした事件で、裁判や交渉を通じて、損害を補填させることができた事案が何件かあります。
労災事故で、労災認定され、後遺症認定がなされた場合、働き盛りの方であれば、後遺症等級が7級程度であっても、損害賠償の金額としては、優に1000万円を超える請求が可能な場合も多くあるのです。ましてや亡くなられた事案ではそれ以上の問題となります。
そうしたことについての相談で、以上の説明をすると多くの方は、驚かれるのですが、そうした点についての情報をもっと発信していくことが必要ではないかと強く感じています。
大切なことは、職場における労災予防の周知徹底です。
私は、京都のいのちと健康京都センターの副理事長、京都労災職業病対策連絡会の副会長も務めておりますが、それは、なんといっても、職場から少しでも労災を出さない社会こそが必要と思うからです。
来年も一層の努力を惜しまぬよう努めていきたいと思います。