1. 今年最後の仕事・・・公正証書遺言の作成
女性弁護士の法律コラム

今年最後の仕事・・・公正証書遺言の作成

 
(女性弁護士の法律コラム NO.127)
 
Sさんの相談を受けたのは、11月初めだった。
Sさんは、自分は末期ガンなので、遺言を作りたいと語った。その時、Sさんの口から「末期ガン」という言葉が出なければ、およそガン患者には見えなかった。
 
私は、以前にも、ガン患者の方から遺言の作成の相談を受けたことがあったが、「遺言の内容を考えてきます」と帰られた後、連絡がないなあと思っていたところ、後日、遺言を作成する前に亡くなられてしまったことを知った。悔いが残った。
Sさんに、そのエピソードを話すと、「私は、まだ大丈夫です」と笑顔で帰られた。
 
ところが、12月初め、Sさんから、体調が悪いので、自宅まで来て欲しいと電話が入り、飛んで行った。
人間、元気な人でも、明日何が起きるかわからない世の中なので、とりあえずすぐに自筆で遺言を作成してもらうこととし、それと共に、公証人役場で公正証書遺言を作成することに決めた。
 
Sさんは、独身なので、自分の遺産は多くの友人知人に分けたいという希望を持っていた。しかし、弱った身体で、遺言の内容すべてを手書きで書くのは大変だったと思う。
 
公正証書遺言の作成日がなんとか12月28日に決まり、その日まで、突然倒れて意識を失ってしまうようなことがないかしらと心配したが、大丈夫だった。
そして、今日、Sさんは、雨の中、公証人役場に赴き、自筆で書いた遺言と同じ内容の公正証書遺言を作成することができた。
Sさんは、とてもホッとしておられた。
公証人さんが「公正証書遺言は、あなたが120歳になるまでここで保管しておきますからね」と言われた時、Sさんは「120歳を超えて生きたらどうしましょう?」と冗談が出るほどだった。
そして、もちろん私も、Sさんの気持ちに応えられたことが嬉しかった。
 
1日でも長く元気でいてほしい。
 
 
 

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