1. 「養育費・婚姻費用の簡易算定方式・簡易算定表」の問題点の勉強会
女性弁護士の法律コラム

 
(女性弁護士の法律コラム NO.117)
 
4月17日付け当ブログの続きです。
 
昨日(7月5日)、京都弁護士会で「養育費・婚姻費用の簡易算定方式・簡易算定表」の問題点についての勉強会がありました。
 
この簡易算定表は、数名の裁判官らによって作成され、2003年3月に雑誌に発表されて以降、家裁の調停などで婚姻費用や養育費を決める際、目安として利用され、現在では、実務に定着しています。
離婚などの解説本にもたいていは紹介されています。
 
しかし、今年3月、日本弁護士連合会は、この算定表には構造的な問題があり、そのため算定される金額が低額で、母子家庭の貧困の一因となっていると指摘する意見書を発表しました。
私たち弁護士の中にも、算定表にどのような問題点があることも知らずに使用している人が多いので、 勉強会が開かれたわけです。
 
本来、婚姻費用や養育費の金額については、義務者(多くは父親)と同程度の生活ができる金額と言われています。
しかし、実際に算定表で算出された金額は、「義務者と同程度の生活」からはほど遠いというのが実感です。
 
下記は主な問題点です。
① 公租公課は実額認定できるにもかかわらず、この表は標準化した公租公課の金額をもとに作成されており、しかも、この10年間の所得税制や社会保険料率の改定等も反映されていない。
 
② 総収入に占める職業費(交通費・書籍費・こづかい・交際費など)については世帯全体分の支出額をもって職業費とし、しかも、就労に必要な部分と私的な部分とを区別していない。
 
③ 住居費や保険掛金などを特別経費として個別具体的事情を一切考慮せず平均値を使って標準化して控除している。
 
④ 生活費を算定する指数を、親100として、子どもは0~14歳が55、15~19歳が90としている。
しかし、なぜ、0歳と14歳とが同じ55なのか、14歳と15歳とでなぜ大きな開きがあるのか。生活実態とかけ離れている。
 
上記の問題点はなかなか裁判所には受け入れられない現実ですが、できる限り生活実態に 合った婚姻費用や養育費の金額をめざしていきたいと思います。
 
 

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