1. メモの重要性(その2)~ある離婚事件~
女性弁護士の法律コラム

メモの重要性(その2)~ある離婚事件~

 
(女性弁護士の法律コラム NO.103)
 
「 メモの重要性」という意味で記憶に残る離婚事件がある。
 
A子さんは、家の中のすべてを取り仕切って彼女を女中扱いする同居の姑とそれに追従する夫の態度に耐えられず、別居した。
 
私がA子さんの代理人となって離婚訴訟を提起すると、夫は弁護士をつけず本人訴訟。
そして、夫は、母は妻が言うようなことはしていない、自分も今でも妻を愛している、妻は精神的な病気ですべて妄想であるなどと繰り返し述べ、「愛している」「帰ってきて欲しい」という内容の妻宛の手紙も裁判所に提出したりした。
このような夫の態度から、裁判官の言葉の端に「本当に妻と姑との間に確執があったのか」との疑念も見え隠れし始めた。
 
そこで、A子さんに「日記とかつけてない?」と尋ねると、日記はつけていないが、家計簿をずっとつけていて、その家計簿の各頁の余白にその日の出来事や思いを簡単に記していたものならあることがわかった。
早速、数年分の家計簿を持って来て読ませてもらうと、よほど姑との関係がつらかったようで、姑の言動やA子さんのつらさ・苦しさが、短い言葉ではあったが、リアルに記されていた。それを証拠として提出したところ、裁判官の態度が一変したことは言うまでもない。
 
夫婦の間の出来事は、夫婦しかわからないことが多く、離婚事件でも立証の決定打に欠けることも少なからずある。
そんな時、日記とまではいかなくても、A子さんのように日々の出来事を家計簿の余白などに記しておくことは、非常に有効である。
 

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