1. 「仕掛学」(松村真宏 著)を読んで
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「仕掛学」(松村真宏 著)を読んで

 
世の中には、面白い学問があるもんやなあと思う。
テレビと新聞(2019年12月18日付け京都新聞夕刊)で知った「仕掛学」。
面白いと思ったので、本まで買って読んでしまった。
「仕掛学」の研究者は、大阪大学の松村真宏教授。2011年に提唱された。
 
「仕掛け」とは・・・
 
京都でよく見かけるのは、塀の下の方に付けてある小さな鳥居。これがあると、立ち小便や犬の散歩中に塀におしっこをかけたりできない。小便禁止の「仕掛け」である。
 

 
駐輪場に線が引かれていると、それを横切るようには自転車を停めにくく、つい線に沿って停めてしまう。駐輪場が整理整頓できる「仕掛け」である。
 
おもちゃを入れるゴミ箱の上にバスケットボールのゴールネットを設置すると、思わず狙いをつけて、おもちゃを投げてシュートしたくなる。結果的に、おもちゃがゴミ箱に片付く「仕掛け」である。
 
エスカレーター横の階段にピアノの鍵盤が描かれており、階段を利用すると、ピアノの音階が鳴る。階段を利用して楽しみながら運動ができるための「仕掛け」である。
 
男性用の小便器に「的」を貼ると、つい狙いたくなり、的は飛散が最小になる場所に貼られているので、トイレを綺麗に使う「仕掛け」である。
 
「~は禁止」「整理整頓」「健康に良いから階段を上る」など、頭ではわかっていても、なかなかそのようには行動出来ないのが人間の性というものであろうか。
しかし、「仕掛け」は、無理矢理行動を変えさせるのではなく、つい行動を変えたくなるように仕向けるアプローチなのである。
 
但し、仕掛けは悪用することもできる。
松村教授の「仕掛け」は誰かが不利益を被ったり、不快な思いをさせるような仕掛けは想定されていない。
 
本は、次の3章から展開されている。
1章  仕掛けの基本
2章  仕掛けの仕組み
3章  仕掛けの発想法
 
仕掛けの発想で大事にしたいのは、実現可能性。
その例として、アメリカのNASAは、無重力状態ではボールペンが書けないことを発見した時、10年の歳月と120億ドルの開発費をかけて、無重力でも書けるボールペンを開発した。
一方ロシアは鉛筆を使った。
松村教授は、問題に直面した時、技術に詳しい人ほど技術にとらわれてしまい、使う必要のない技術をわざわざ使って簡単な問題を難しく解決しようとしている、と述べる。
仕掛けを作る際に、本質を見失っていないかを常に心に留めておくべきである。
 
松村教授は、世界は仕掛けにあふれているが、仕掛けに気づかないことも多い、と述べる。
 
これからは、「仕掛け」を探しながら町中を歩けば、また歩くことも一層楽しくなるような気がしている。
 
 
 
 
 
 

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