佐藤弁護士の最近の記事

  昨年(平成23年)12月26日に、厚生労働省は、「心理的負荷による精神障害の認定基準」(以下単に新認定基準といいます。)を定めました。

 これは、仕事をする中で、その仕事に起因してメンタル障害(精神障害)を発症した場合に、労災として認定するにあたっての判断基準です。

 いわゆる「過労自殺」や、職場の「いじめ」「パワハラ」「セクハラ」などによりメンタル障害を発症した際に、どのような場合に労災として認めるかの判断基準です。

  それまでは、平成11年9月14日に出されている「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」に基づいて判断されてきていました。(この判断指針による労災認定の問題点などについては、弁護士佐藤の「なるほど講座」をご参照ください。)

  この新認定基準は、平成23年11月8日に出された「精神障害の労災認定基準に関する専門検討会報告書」に基づいて作成されたものです。

  新認定基準の特徴として、長時間労働をそれ自体としても、精神障害発症の原因となり得ることを認めるとともに、仕事上の心理的負荷が強いと認められる出来事と月100時間を超える時間外労働時間が発症前6ヶ月の間に存在し、それが関連して(正確に指摘をすると関連しなくとも前後に一定の強度の出来事が存在する場合も対象になりますが)いると認められる場合には、労災として認定すべきとしていることがあげられます。

  新認定基準制定以降数ヶ月が経過をしていますが、この間各地の審査官において、この新認定基準による再調査により、労災として認められる方向での見直しが実際に行われ、新たに労災認定の通知が出されていく傾向があります。

  新認定基準に関しては、前進面も運用上懸念される面なども存在しますが、少なくとも、判断指針において、労災と認められなかった事案が、見直されている傾向が現にあるということは、重要なことであると思います。

  今後何回かに分けて、弁護士佐藤の「なるほど講座」で、新認定基準についての検討を記載していく予定です。

            2012年5月11日  弁護士 佐藤 克昭

 昨年の9月に、京都の上労働基準監督署に労災申請をしていました過労(脳・心臓疾患関係生存事案)事件で、本年3月1日付にて、業務によるものとして労災認定がされました。
 京都労災職業病連絡会の芝井事務局長、京都らくさい法律事務所の古川拓弁護士とともに取り組んできた事件です。

 この事件は、総合病院の内科医長を勤めていた被災者が、平成21年5月2日に、脳出血を発症した事案です。
 勤務されていた循環器内科においては、急変患者等の急性期治療での緊急カテーテルなど繊細な注意と多大な心理的負荷のかかる業務を担当されていました。

 当該病院では、タイムカードにより時間管理がしっかりとなされており、医師の多忙化の中で、医師の健康についての改善も一定は図られ、宿日直からそのまま診療などの医療行為につくことを避ける努力等も従前に比べると変化してきていることはありましたが、医師としての業務の必要性から、やはり、緊急の呼び出しの当番による十分な質の睡眠の確保が困難であること等、発症への背景が存在していたことは、明らかでした。

 また、被災者の置かれた状況として、以下のような点が、重要であることを指摘しました。

 第1に、休憩時間が、実質的には30分以内しかとれない状況が、存在していたことです。

 第2に、同一法人内の複数(5院所)の病院をかけもちして、医療行為に当たっていたことです。
 そのうち一つの診療所については、遠方であり、自ら自動車を運転して、往復することを伴っていました。

 第3に、管理職としての人員シフトなどについての対応や、人事異動による引き継ぎなどの業務も含めた精神的ストレスが重なっていたことです。

 これらを踏まえて、被災者の労働時間の整理と、医師としての業務の評価という付加的要因を評価すると、業務に起因するものと判断すべきとの整理を行いました。

  相談をお受けしてから、打合せを何度も重ね、病院内での休憩時間や勤務状況について、関係者の方々の協力もいただき、多忙な中何度も聴き取りを行いました。

 監督署の判断としては、
  ①労働時間の把握については、タイムカードを基本にして算定し、
  ②休憩時間については、関係者からの確認を含めて行い、主張を念頭に置いた算定としたこと、
  ③遠方診療所への移動については、診療行為の遂行のため必要な移動であることを念頭に置いて算定にあたったこと、
  ④発症前3ヶ月の平均時間外労働時間が80時間を超えていること
  ⑤医師としての業務内容の負荷を考慮したことを前提にして、業務上としたとの説明を頂きました。

 申請にあたっては、申請時における適切な助言を、監督署次長、課長などからもいただき、労災保障制度の理解を深めることもできました。

 申請から6ヶ月を経ることなく迅速に、業務上決定を頂いた担当官等の対応にも敬意を表したいと思います。

 これまでの、蓄積を踏まえて、申請までにしっかりとした準備を行うことがやはり大切であり、とりわけ、近時は、申請から6ヶ月以内に判断を示すことが労働行政においては求められていることから、申請までのしっかりとした準備と整理がきわめて重要であることを、痛感しています。

                2012年3月21日  弁護士 佐藤克昭

過労自殺労災申請事案で、労災認定!

 昨年(2010年)の12月に、大阪の中央労働基準監督署に労災申請をしていました過労自殺事件で、8月26日付にて、業務によるものとして労災認定がされました。京都労災職業病連絡会の芝井事務局長、京都南法律事務所の毛利弁護士とともに取り組んできた事件です。

 この事件は、平成12年4月に、新卒にて自動車のリースを主な業務とする会社に就職した被災者が、平成20年12月以降、担当する会社の合併、納車した自動車に対するクレーム、職場におけるコンピューターシステムの抜本的変更などのイレギュラーな業務が重なったため、長時間労働を余儀なくされ、その心労により平成21年4月にうつ病を発症し、同年5月6日に自死したという事案です。

 被災者は、就職当初から総合職として勤務されていましたが、就職当時は、男性総合職の社員とは区別されており、事務的な仕事が主な業務でした。
 しかし、会社の合併等に伴って、女性総合職の社員も次第に男性と同様に顧客管理を任されるようになり、自らが顧客に対して責任を持たなければならない立場となっていったのです。
 被災者の業務は、契約の見積りの作成、取引先との商談、リースする自動車の手配・納車までの管理、リースの期限が来た際の更新に関する手続の管理などでした。
 しかし、被災者が本件うつ病を発症した時期には、これらの通常業務とは異なる、担当会社の大合併、クレーム対応、コンピューターシステムの変更による業務効率の著しい低下、突出した長時間労働といった複数の問題を同時に抱えることとなり、その業務の過重性により被災者はうつ病を発症し、自死に至ったものです。

  相談をお受けしてから、打合せを何度も重ね、直前に受診していたクリニックのお医者さんにも面談をお願いし、会社の同僚、関係者への聴き取りを何度も行いました。
  厚生労働省のメンタルにかかる労災認定の判断指針を念頭において、心理的負荷としての出来事を整理し、それを裏付ける陳述書とともに、意見書を作成提出しました。

  心理的負荷としての出来事が、近接して発生していたこと、出来事後に仕事量が増え責任も重くなっていたことなどを指摘しましたが、ほぼ、私たちの意見が裏付けられる形で、認定されることとなりました。

 これまでの、蓄積を踏まえて、申請までにしっかりとした準備を行うことができ、それが認定につながったものと考えています。

2011年10月15日  弁護士 佐藤克昭

 

京都建設アスベスト訴訟を提訴しました!!!

   建設アスベスト提訴集会20110603.JPG去る6月3日、京都府内で建設業に従事し、その結果、アスベスト(石綿)を含む粉じんを吸引したことにより、肺ガンや中皮腫などの重い疾病にかかった建設業従事者11名が原告となって、国とアスベスト含有建材製造メーカー44社に対して損害賠償を求める京都建設アスベスト訴訟が提訴されました。

 

管理職の海外出張中の心疾患死亡事案で労災認定

生花関連会社管理職の海外出張中の心疾患死亡事案で労災認定

  ~ 申請後5ヵ月あまりでの過労死労災認定
                                          
                                          弁護士 佐藤 克昭

 被災者の方は、40代後半の男性です。海外の研修旅行中宿泊先のホテルで、亡くなられました。虚血性心疾患の診断でした。
  海外で亡くなられた場合には、死亡原因の確認や死亡診断書の発行等残された家族の方には、特別な対応を余儀なくされることとなり、それだけでも大きな負担となります。
  労災申請を8月に行い、認定されたのがその年の12月の終わりですので、迅速な手続きによる救済となりましたが、その背景には、監督署担当職員の方々の想いに答えた対応と、小さなお子さんを抱えた配偶者の方の奮闘と頑張りがあります。
    京都労災職業病連絡会の事務局長の芝井さんと南法律事務所の毛利弁護士と一緒に取り組んだ事案です。

 被災者の方は、会社の業務の中核として注文の手配・人員の配置等を行うとともに、自ら生花を受け取りにいく業務や実際に現場に赴いて業務を行うなど精力的に仕事をこなしてこられていました。
    現在の過労死の認定基準では、被災前6ヵ月の時間外労働時間が、業務との因果関係を推認させる大きな要素となっており、業務それ自体の過重さと同時に、直前6ヵ月の長時間労働をどう実態に即して確認できるかが大切です。
    本件では、タイムカード上の労働時間について「手書き部分」をどう裏付けるか、休憩時間の取り方についての実態の把握等が、重要な要素となりました。
    会社の社長さん及び当時の同僚等から聞き取りを重ね、監督署に申請する前に、重要な点を確認することに留意しました。

 最近の労働基準監督署(厚生労働省といった方が正確でしょう)の方針として、過労死・過労自殺の事案であっても、申請から6ヵ月をめどに結論を出すことが奨励されています。
    過労死・過労自殺などの労災申請は、引き続き高水準を保っていますので、限られた人員で対応する各監督署の担当官の担当件数もかなりの数字になっていることから、申請するに際しては、十分な調査確認とそれなりの対応を行った上で、監督署の担当官が調査をする視点や確認すべき内容を整理するという努力が申請をする側においても事実上必要になっている感じを受けています。
    申請にあたって、そうした内容を整理し、担当官に面談をして、具体的な方向性についての意見交換や理解を求めることも必要ではないかと思います。

 本件では、そうした準備と対応が功を奏し、発症前6ヵ月の時間外労働時間が、100時間を超えていたことが認められ、早期の労災認定につながったと考えています。

                        (2011年2月14日)

事務所弁護士が関与した労災関係事件!

労災認定・労災関係損害賠償事件の内20(以上)事案の紹介  (2009年2月末時点)                                        
  京都法律事務所は、京都労災職業病連絡会(略称京都職対連)及び各労 働組合・被災者家族の会とも連携をとり、過労死・過労自殺・けいわん・ 腰痛労災等の認定、損害賠償裁判に取り組んできています。

「過労自殺」事案で、労災認定!

  当事務所佐藤弁護士とらくさい法律事務所古川拓弁護士が、共同して取り組んできた事件です。
  2009年3月末に、下労働基準監督署において、「過労自殺」の事案について、業務に起因するものとして、労災認定をえることができました。

 2009年の2月に、当事務所のホームページをごらんになり、労災に関する専門的な対応を希望され、当事務所の弁護士(弁護士佐藤克昭)に相談をされた方の事案で、アスベスト健康被害救済法による特別給付金の支給が認められました。

                 京都法律事務所  弁護士 佐藤克昭 (2009年8月記)

中居労災(過労死裁判) 大阪高等裁判所で逆転勝訴判決

 中居和好さんが、平成2年3月16日に亡くなられて16年以上を経た、平成18年4月28日、大阪高等裁判所第14民事部(井垣敏生裁判長)は、原判決を取消し、被災者の死亡は、業務に起因するものであるとの判断を示しその判決が確定いたしました。

           京都法律事務所  弁護士 佐藤克昭  (2006年5月記)

中居労災判決の詳細報告

16年後の労災認定~中居労災大阪高裁逆転勝訴判決(詳細)

弁護士紹介TOP

アーカイブ